声のする方向に視線を向けると、地面の上に横たわる嶋田さんと芽衣ちゃん。
その体からぼんやりと白い影のように人が浮かび、立っている。
「いつになってもお前はお節介な奴だな。」
嘆息しながらポツリとお兄ちゃんが呟いた。
「お褒めの言葉と取っておきますよ。」
お兄ちゃんの言葉をサラリと交わして左近さんは私達に近付いてきた。
「女の子を泣かすとは殿もまだまだですね。」
「口を慎め、左近。」
「いいえ、今回は前とは状況が違いますよ。
このお嬢さんを二回も泣かすのはいけません。」
「だが俺は…。」
宥めるような言葉にお兄ちゃんは苦しそうに顔を歪め、何も言えなくなった。
二人から視線の離せない私と佐和さんはぼんやりとその会話を聞きながら左近さんの事を考えていた。
天正11年(1583年)
賤ヶ岳の合戦で清正ら七本槍に次ぐ武功を賞してお兄ちゃんは水口4万石の城主になった。
その与えられた4万石の半分の2万石をさいてでも獲得したかった人物。
それが不出世の将器と言われる島左近。
最後の関ヶ原までお兄ちゃんと共に歩んだ一番の家臣。
その人が今私達の目の前でお兄ちゃんと話している。


