「まだ行けると決まったわけじゃない!
落ち着け紫衣。」
ぎゅっと佐和さんの腕に力が籠もった。
だけど私の心は知っている。
ザワザワと騒ぐ胸が未来を暗示しているようで、ただ恐ろしかった。
歴史は変わらない。
誰かにそう言われているような気がした。
変わらなければ…
お兄ちゃんは…
「イヤッッ!」
こんなの残酷すぎる。
やり直したいと思っちゃダメなの?
やり直しなんて最初から出来なかったの?
何をしても、どんなにがんばっても決まってしまった歴史は動かないの?
紫衣を不幸にするために私は入れ替わったの?
二度も同じ思いをさせるためにお兄ちゃんと出逢ったの?
「この動きを止めることは出来ないのか?」
私を強く抱きしめながら佐和さんはお兄ちゃんに話し掛けた。
「わからない…。」
首を横に振りながら静かに応えるお兄ちゃん。
重い空気が流れる。
「紫衣、すまない。
俺が全てを招いたのだろう。」
悲しそうなお兄ちゃん。
そっと私の頬に触れたお兄ちゃんの手。
流れる涙を丁寧に拭ってくれる。
「全て忘れればいい。
穏やかに生きてくれ。」
額に熱を感じて私の意識は遠のいた。
霞がかかる意識の中…
「幸せになるのだよ…。」
優しく強い言葉を聞いて、その言葉に胸がぎゅっと苦しくなり私の意識はそこで途絶えた。
お兄ちゃん…。
幸せになるのは
お兄ちゃんも一緒だよ…。
幸せになってほしい…
この思いは変わらないの…。


