勝利の女神になりたいのッ!~第1部~



「まだ行けると決まったわけじゃない!
落ち着け紫衣。」


ぎゅっと佐和さんの腕に力が籠もった。


だけど私の心は知っている。


ザワザワと騒ぐ胸が未来を暗示しているようで、ただ恐ろしかった。


歴史は変わらない。


誰かにそう言われているような気がした。


変わらなければ…


お兄ちゃんは…





「イヤッッ!」



こんなの残酷すぎる。


やり直したいと思っちゃダメなの?


やり直しなんて最初から出来なかったの?


何をしても、どんなにがんばっても決まってしまった歴史は動かないの?

紫衣を不幸にするために私は入れ替わったの?


二度も同じ思いをさせるためにお兄ちゃんと出逢ったの?



「この動きを止めることは出来ないのか?」


私を強く抱きしめながら佐和さんはお兄ちゃんに話し掛けた。


「わからない…。」


首を横に振りながら静かに応えるお兄ちゃん。



重い空気が流れる。



「紫衣、すまない。
俺が全てを招いたのだろう。」



悲しそうなお兄ちゃん。

そっと私の頬に触れたお兄ちゃんの手。


流れる涙を丁寧に拭ってくれる。


「全て忘れればいい。
穏やかに生きてくれ。」

額に熱を感じて私の意識は遠のいた。



霞がかかる意識の中…



「幸せになるのだよ…。」


優しく強い言葉を聞いて、その言葉に胸がぎゅっと苦しくなり私の意識はそこで途絶えた。



お兄ちゃん…。



幸せになるのは



お兄ちゃんも一緒だよ…。


幸せになってほしい…


この思いは変わらないの…。