抱きしめていた私からすっと体を離すお兄ちゃん。
お兄ちゃんのぬくもりに安心をもらっていた私は急にそのぬくもりを感じることが出来なくなって寂しく、そしてやはり体が震えだした。
自分の体を両手で抱くように肩に手を持って行く私に、
「おいで。」
両手を広げた佐和さんが声を掛けてくれた。
ふらふらとした足取りで佐和さんまで足を進め、その胸にポスンと体を埋めた私の背中を佐和さんがゆるりと撫でてくれる。
「どうして電話しなかったんだ?」
「ごめんなさい。」
「一人でこんな所まで来たら危ないだろ?」
「気がついたらここに来てたの。」
正直、店を出てからの記憶は乏しい。
良君の話を聞いてからザワザワと騒ぐ胸と何かに追いかけられる恐怖だけが心の中をしめていて、佐和さんに連絡をする余裕なんてなかった。
正直に話す私に佐和さんはそれ以上は何も言わずお兄ちゃんに視線を向けると、
「いったいアイツは何者なんだ?」
私から離れて池を見つめているお兄ちゃんに問いかけたんだ。
佐和さんの言葉に池を指差したお兄ちゃん。
「嘘…。」
「マジかよ…。」
驚きに言葉を失う私と佐和さんの代わりのように芽衣ちゃんと嶋田さんの言葉が響いた。


