恐怖なんて生易しいものじゃなかった。
私は店を出て、お兄ちゃんと逢った池を目指した。
壊してしまうかもしれない。
やっと幸せになろうとしているお兄ちゃん。
紫衣に出逢い、全てやり直せるかもしれないお兄ちゃんの時間が壊れるかもしれない。
そんなの嫌っ!
何かに追いかけられるように私は走った。
無我夢中で池にむかったんだ。
「来ると思っていた。」
池に浮かぶお兄ちゃん。
「ごめんなさい。」
足の力が抜けて私は土の上にガクリと膝をついた。
「じきに佐和も来るだろう。」
「私は大きな間違いを…。」
「間違ってなどいない。」
私の言葉を遮るお兄ちゃんの言葉。
私は何も言えずただ首を横に振った。
地面についた手が土を握りしめる。
間違いじゃないなんて嘘よ!
私の罪は大きすぎる。
芽衣ちゃんや嶋田さんと良君を同じように考えていた私は浅はかだ。
ずっと一緒に過ごしてきた芽衣ちゃんと良君を同じにしたことが私の最大の過ちなんだ。
軽率な自分の行動を悔やんでも、もう取り返しはつかない。
「ごめんなさい。」
なのに謝ることしか出来ない自分を本当に情けないと思った。


