「今日はありがとう。」
差し出された手に私も自分の手を重ねた。
「元気で…。」
「良君も…。」
入り口に向かって歩く彼の後ろ姿を見送ったのはどの位前の事だろう。
佐和さん達がお店を出てからどの位時間が過ぎたんだろう。
1時間欲しいと言った私の言葉を守ってくれているのなら、まだ1時間たっていないんだろうか。
けれど佐和さんの事だから、きっと時間を急かすような事はしない。
たとえ1時間たっていても私と良君の話が1時間なんかじゃ済まないと思ってぴったりな時間に姿を現すことはないはず。
「毎日のように夢を見るんだ。
紫衣の生きる時の夢を…
それは俺が紫衣と繋がっているという事だと思うんだ。
それに俺に似た奴も見つけた。
紫衣ちゃんと紫衣、三成と石野さんが繋がっていたように俺もソイツと繋がっているかもしれないだろ?
方法はわからないよ。
だけど、チャンスはないわけじゃない。
そう思うんだ。」
良君の言葉が頭の中でぐるぐると回っている。
考えたこともなかったけど良君の言うことは全て間違ってるとは思わなかった。
間違いや正解とかじゃなく、むしろ私が見落としていた道しるべを良君が見つけたのかもしれないと思った。
お兄ちゃんの言っていた輪廻転生。
それが道しるべならば可能なのかもしれない。
良君と繋がるその人がお兄ちゃんのように魂を残し、不思議な力を持っていたなら…。
良君の望みは叶うかもしれない。
そうなると紫衣は?
お兄ちゃんは?
いったいどうなるの?
時を越えても紫衣に逢いたい――…。
耳の奥で何度も木霊する良君の言葉。
ぶるりと体が震えた。
もしかしたら私は大きな過ちをおかしたのかもしれない。
真実を話して謝罪するという考えは間違っていたのかもしれない。
良君の紫衣への執着心が何かを変えてしまうかもしれない。
そのきっかけを私が作ったのだとしたら――…。


