嘘だろって否定し続けていた良君から出た意外な人物の名前に私はやはり言葉を失った。
私と紫衣が生きる時代を入れ替わった事を信じてくれるの?
「そうなんだな。」
「え?」
「君も…えっと紫衣ちゃんでいいかな?」
「はい。」
「紫衣ちゃんの顔にそうだって書いてあるよ。
それに三成を大事だって…。」
大好きなお兄ちゃん。
そして大好きな紫衣。
「大切な人です。
二人は私にとってかけがえのない人…。」
「紫衣ちゃんも幸せ?」
「はい。」
「素直なところは紫衣も紫衣ちゃんもよく似てるよ。」
にっこりと微笑んでくれる良君に恥ずかしくて俯いてしまった。
「その仕草も似てる…。」
震える声で彼は告げて私に手を伸ばし頬に掌でそっと触れた。
「好きだよ紫衣。
ずっと後悔してた。
紫衣、俺は紫衣しかいらない。」
彼の頬をつたう一筋の涙。
彼の言葉は私に向けられたものではない。
彼の瞳に私は映っていない。
私を通して紫衣に話しかけているのだろう。
時間が止まったように動けなかった。
ただ彼の頬を流れ落ちる涙がとても綺麗で瞳を彼から逸らせずに見つめていたんだ。


