さっきまでの困惑した表情も怒りも嘘みたいな三成の笑顔が目の前にあった。
彼には私達の言葉の食い違いがわかったようで、
「側から離れたくないのか?」
満足げに私に問いかける。
思い返すと三成に縋りつくような言葉の数々を口にして、恥ずかしくて仕方がなかった。
だから三成の問いかけには応えず、
「厄介とはいったいどういう事なんですか?」
自分が一番知りたいことを尋ねた。
途端、三成の眉は中央に寄り私を不服そうに見つめていた。
均整の取れた綺麗な三成の顔。
少しくらいその表情を歪めても綺麗なのに変わりはなく、私は見つめられると必ず目を逸らしてしまう。
だけど、それが気に入らない三成に毎回注意されるんだ。
「俺を見ろ!」
「ごめんなさい。」
「側から離れたくないのか?」
「え?」
「応えよ!」
三成にしては珍しく命令口調で問いかけられ、私は恥ずかしさも忘れて素直にコクコクと首を上下に動かした。
頷いた後になってとてつもなく恥ずかしさがこみ上げ、結局目を逸らしてしまったのだけれど、それを咎められることもなく三成は満面の笑みを浮かべていた。
「厄介というのは紫衣の事であって紫衣の事ではない。」
俯いたままの私に掛けられる言葉。
だけど、言葉の意味が理解できない私は首を傾げた。
「俺も紫衣を放したくはない。」
私の背中を撫でながら三成は言葉を落とす。
彼に体重を掛けないように床に手をつき、上体を反らしていた私は背中を撫でていた彼の手に押さえられて、その胸に顔を埋めた。


