紅葉さんが出て行ってから、かなりの時間を私は一人で過ごしていた。
退屈だし、やっぱり緊張する。
宴の部屋に近いのかワイワイと騒ぐ声も聞こえてくる。
「まだかな?」
思わず漏れた言葉に襖の向こうから言葉が返ってきた。
「石田殿の奥方であられますか?」
太く低いガラガラとした声。
「はい。」
返事を返したものの誰なのか、どうして今ここで声を掛けられるのかがわからず体が硬直し声も上擦ったものしか出せなかった。
「部屋に入ってもよろしいかな?」
困惑する私になおも話しかける誰か。
「いえ…。」
いったいどうすればいいの?
今日、屋敷に招いたのは二人。
お付きの人も来ているのかな?
それとも、二人のうちのどちらかが今襖を隔てた場所に来ているの?
「失礼する。」
きちんとした返答の出来ない私にその誰かは声を掛けて襖を開け放った。


