なんだか腑に落ちないところがありありだけど、一件落着ムードの部屋に突然三成が現れた。


襖が開いて足を踏み入れる三成。


その顔はやはり不機嫌なものだった。


「何をしている。」


眉間に深い皺を刻んで言葉を落とす三成の視線の先は左近さん。


きょとんとしたまま動けない私の隣に腰掛けた左近さんはニカッと笑い、私を抱き寄せた。


「娘を可愛がっているのです。」


「紫衣から離れろ。」


低く唸るような三成の声に驚きを隠せない私は体をびくりと震わせた。


だけど左近さんは私を放すことなく更にぎゅっと抱き寄せてくすくすと笑っている。


「父親が娘を可愛がっているだけですよ?」


「離れろ。」


三成の言葉と同時に私は手を引かれ、その胸に抱き寄せられる。


その姿を見た左近さんは紅葉さんに、


「酒席で紫衣が侍るとどうなるかこれを見たらわかるであろう?」


話しかけて豪快に笑い声を響かせた。


「謹んでお受けいたします。
まだまだ命は惜しゅう御座いますゆえ…。」


からかうような紅葉さんの言葉にとても恥ずかしくなった。


不機嫌な三成の登場に左近さん達は部屋から退出すると腰を上げた。


宴までの時間、三成とゆっくりと過ごすようにと声を掛けてくれる左近さん。


部屋から退出し襖を閉めるときに、


「時間はそれ程ありませんよ。
仲良くするのはほどほどにお願いしますよ。」


からかうように、念を押してから襖を閉めた。