呆けたまま部屋で座っている私の時間が動き出したのはニコニコと笑う朱里さんの姿を瞳に映してからだった。
「あらあら、聞いてはいましたがこれほどとは…」
困りましたねって言いながらも嬉しそうに目を細める朱理さん。
時間が動き出したからとはいえ、まだ正常に頭が回らない私には彼女の言葉の意味が理解できなかった。
首を傾げたまま視線を向けると、満面の笑みを浮かべた彼女の艶やかで形の良い唇が開かれた。
「殿がこんなに情熱的だとは朱里も初めて知りました。」
「情熱的ですか?」
やはり朱理さんの言葉が何を言いたいのか解らなくて質問を返すと、
「まだ陽の明るいうちから着物を乱すような熱いお方だとは思いませんでした。」
「―――…!!」
驚愕の言葉を耳にして言葉を失った。
そんな私に更に朱理さんは追い討ちを掛けるように言葉を紡いだ。
「左近様も喜んでおられましたよ。
娘のように可愛がっていた紫衣と主である殿の仲睦まじい姿を見れたと。」
恥ずかしい…。
「さぁさぁ着物を整えましょうね。」
手を引かれて立ち上がる私の着物の着付けを整える朱理さんは鼻歌を歌いながら終始ご機嫌だった。
部屋から出るときの朱里をよこすという三成の言葉を気にしてはいなかったがこういう事だったのかと少し恨めしい気持ちになった。
「嬉しいのでございます。堅物だと珍しがられていた殿も普通のお人だと思うと朱里は嬉しゅうございます。」
大袈裟な程喜ぶ朱理さんを不思議に思った。
私にとって三成はいつでも情熱的で堅物などと思ったことはない。
堅物というよりは柔らかすぎて困るくらいで、彼と一緒に過ごす時間は甘く優しいものばかりだ。
「堅物なんて…
よくわからないわ。」
思ったことを口にすると朱理さんは頬を染めて、
「紫衣の前ではやはり特別なのですね。」
妖艶に微笑んだ。


