私の体を抱き寄せる彼の腕にそっと触れた。
背中に密着する彼のぬくもりを感じた。
そして私の肩にのせられた彼の顔、首筋に掛かる彼の吐息を感じた。
体中で彼を感じていた。
だけど彼の顔を見ていない。
怒ってるの?
部屋に入ってきたときは不機嫌に眉間に深い皺を刻んでいた彼の表情だったけど、今は?
ねぇ、どんな顔をしているの?
さっきは何故真っ赤に頬を染めていたの?
あなたが怒って険しい表情をしているなら、私が少しでも和らげてあげたい。
もしも寂しい表情をしてるのなら癒やしてあげたい。
「三成様――…」
肩の上にのせられた彼の顔に頬を寄せて名を読んだ。
「紫衣には適わないな」
彼は小さく呟いた後、私の体の向きを変えて正面から抱きしめてくれた。
そして朱理さんもハッキリと教えてくれなかった宴の詳細について話してくれたんだ。
「紫衣をアイツらなんぞに逢わせたくない。」
拗ねたような口調で締めくくられた話の内容は、何故私に隠す必要があったのかわからないほどどうでもいい内容で益々私はわからなくなった。
左近さんと紅葉さんは街で偶然を装って清正と正則をこの屋敷に呼び、酒宴の席を用意すると誘いを持ちかけるために出掛けているそうだ。
「三成様はお二人をどうしてそんなに嫌っているのですか?」
「………」
戦国の世では三成のような人の方が少ないだろう。
だから清正や正則が酒を飲み、女を侍らせるなんて普通のことじゃないのかな?


