沈黙を破ったのは紅葉さんだった。
「紫衣が望むことは何?
殿の幸せじゃないの?」
足を投げ出して座っている紅葉さん。
バタバタとまるで駄々っ子のような仕草に緊張も溶かされていく。
「そうだよね。
私が大切にしたいのは一つだけ…。
だけどね、彼の歴史を話すことは左近さん達の歴史も話すことになってしまうでしょう?」
「そんなこと?」
「大切な事だよ!」
「お前は本当に阿呆だ。」
溜め息混じりの紅葉さんの言葉にキッと睨み返すと左近さんの笑い声が部屋に響いた。
「阿呆の紫衣、阿呆阿呆―!!」
むぅ!!
からかうような紅葉さんの声。
「なによッッ!
紅葉さんの馬鹿ッッ!!
未来を知ることを怖いって思わないのッッ?
私は怖いよ…
知ってる未来が怖くて仕方ないんだもんッッ!」
彼を、みんなを失いたくない。
私の知る歴史が嘘ならいいのにって何度も思った。
どうしようもなく怖いんだ。


