「うぉッッ!」
「キャッッ!」
ドアのすぐ横の壁に張り付くようにして並んで立っている芽衣ちゃんと嶋田さん。
強張った表情と悲鳴が二人の驚き具合を示していた。
「悪趣味だな…。」
固まったまま動かない二人に佐和さんは声を掛けてから同じように動けない私のそばに戻ってきて、もう一度頭を撫でてくれた。
「悪趣味はお前だろうが。」
「お前の方だ。」
「いつから気づいてたんだ?」
「いつからいたんだ?」
嶋田さんは佐和さんと会話を進めながら部屋に入ってきた。
床にドカリと座り込む嶋田さんの隣には芽衣ちゃんがチョコンと正座していた。
「紫衣、あの…ね?
その……邪魔しちゃった?」
「邪魔って?」
ごにょごにょと歯切れの悪い芽衣ちゃんに私は何を言われているのか解らなかった。
もうすっかり起きて目が覚めていたから睡眠を邪魔されたわけじゃない。
何を邪魔したっていうのだろうか…?
芽衣ちゃんは何を気にしてるんだろう…。
邪魔だと気にしなければいけないのは私だったのに…
そう、佐和さんの朝のお祈りを私はさっきまで意味がわからず声を掛けてしまったり…
邪魔なのは私だ、よね?
もしかして芽衣ちゃんは遠まわしに私が佐和さんのお祈りを邪魔してたよって、その事を気づかせてくれようとしてるの?
気のつかない私が佐和さんに呆れられないようにさりげなく注意を促してくれているの?
ハッとして佐和さんに視線を向けると彼は嶋田さんとまだじゃれ合うように言葉を交わしていた。
言い合いをしている二人の口調は強くてもお互い笑みを浮かべるその表情を見ると楽しそうで、ただのじゃれ合いだとわかる。
いつもなら二人の会話に自然に私達も引き込まれ楽しく会話が広がるんだ。
だけど私は二人の会話を耳にして心が凍りついてしまった。


