お祈りを終えた佐和さんは、ほんの少しいつもと様子が違って見えた。
それでも彼の腕は私の体を優しく包んでくれる。
「そういえば昨日…」
ポツリと落とされた佐和さんの言葉が続かない。
不思議に思って彼の胸から視線を上げて顔を見ると彼は表情を曇らせたまま唇を一文字に結んでいた。
「佐……」
「シッ、静かにして。」
彼の名を呼ぼうとして声を出す私に自分の唇にピンと立てた人差し指をあてて言葉を遮る。
どうしたんだろうと少し怖くなって彼のシャツをギュッと握り込んだ。
「アイツら…いったいいつから…」
彼の胸にしがみつくような体勢の私の頭を彼は小さく呟きを漏らしながらユルユルと撫でてくれる。
彼の大きな掌のぬくもりを感じて安心した私は自然に体の力が抜けていた。
そして一旦私を自分から引き離し、ベッドに座らせると彼はもう一度人差し指を唇にあてた。
喋るなって事だよね?
わけがわからないまま私は佐和さんにコクリと頷いて応えたんだ。
「紫衣、好きだよ。」
部屋の扉に向けて言葉を発した佐和さんは、そのままベッドにダイブした。
ベッドが佐和さんの重みと勢いにギシリと軋むような音を立てて弾んだ。
「キャッッ」
当然ベッドに腰掛けていた私の体も弾み、その急な展開に小さく悲鳴を上げた。
「怖くないからな…。
怖くないよ。」
驚いて固まった私を見て微笑みながら彼は声を掛けてくれる。
でも、彼はもう一度唇に人差し指を当てたんだ。
だから私はコクコクと小さく何度も首を縦に動かした。
「いい子だ。」
ベッドから起き上がりながら私に声を掛けてくれる佐和さん。
ギシリとベッドが小さく音をたてる。
私は彼の行動に頭がついていかず頭が真っ白だった。
ただ声を出しちゃいけないんだと彼の指示に従うだけだった。


