彼の腕に引き寄せられ、その胸に顔を埋める。
「たくさん色々考え事をしてました。」
彼のことしか考えられないのに、少し意地悪をしたくなってわざと小さな嘘を口にしたんだ。
「ほう。」
私を抱きしめる腕に力がこもる。
「苦しいです。」
小さな抵抗を試みて彼の背中にまわっている手で彼の背中をトントンと叩いた。
「たくさん色々だろ?」
憎らしい口調。
そんなの嘘だってわかっていて確かめるように聞いてくる。
意地になった私はコクコクと頷いて彼に応えた。
「たくさん色々な...。」
更に腕の力は強くなり息が苦しくなってきた私は彼の背中を強く叩いて言葉を落とした。
「嘘です。降参です。」
細くて華奢な彼の体。
とても力があるようには見えないのに...。
はぁはぁと荒い息を吐き出しながら恨めしそうな視線を彼に向ける私に彼はしてやったりという勝ち誇った表情を浮かべていたんだ。


