体中で彼を感じた。
彼の体も心も全て感じることが出来た。
だけど頭が真っ白になる瞬間に私の心に灯ったのは恐怖...。
白く霞んでいく記憶の中に鮮明に映し出されたのは三成斬首の刑という言葉だった。
「イヤッッ!!」
堕ちていく記憶の中必死にもがいて瞳を開いた。
「どうしたというのだ!」
驚愕する彼の表情。
私は彼にしがみつくようにして、その胸に顔を埋めた。
ガクガクと震える体。
ずっと考えるのを避けてきた歴史の1ページ。
彼は関ヶ原で敗戦した後、家康によって処刑される。
こんなに愛しているのに....
彼を失うことなんて考えられない。
彼と離れるなんて事、私には出来ないよ。
縋りつく私を引き剥がして彼は私の顔を覗き込むようにして合わせた。
「何にそんなに脅えているのだ?」
真実を彼には話すわけにはいかない。
「頭が真っ白になって...それで怖くなってしまって...。」
こんな言葉で誤魔化しきれるのだろうかという思いもあったが私にはそんな風にしか言えなかった。
「それ程によかったのだな。」
「え??」
「よい、そんな紫衣も俺は可愛いと思う..ぞ。」
頬を赤く染める三成。
上手く誤魔化せたことにホッとした反面、私も彼の言葉にとても恥ずかしくなった。
「紫衣は俺のことだけを考えていればいい。」
抱き寄せられて唇を塞がれた。
三成のことだけを考える?
だけど彼に縋りつくだけの生き方ではいけない。
彼を愛しているだけではいけないんだ。
「共に、皺を刻む年になっても私の手はあなたに繋がれていたい。」
「共にか...。」
「はい。」
「ずっと一緒だ。年をとってその顔に皺が刻まれても俺の心も体も紫衣のものだ。」
「私も、いいえ私はこの命が尽きてもあなただけのもの。」


