私の耳には胸を伝わった彼のくぐもった声が響いた。
うた様?
私が三成の奥さんの名前を名乗るってこと?
「待って!!待って紅葉さん!!意味がわかんないよ..」
彼の腕の中から勢いよく飛び出した私は腕にしがみつく様にして向かい合って言葉をかけた。
「何がわからないんだよ。」
いつもの紅葉さん。
唇を尖らせて不服そうな表情の..いつもの紅葉さんだ。
「わかんないものはわかんないの!!」
「お前って阿呆だったな。」
「阿呆って言わないで!!」
「阿呆に阿呆って言って何が悪い!!」
「阿呆じゃないもん!!」
肝心な会話は進まないのに私と紅葉さんは憎まれ口を叩くとポンポンと会話が続いちゃうなんてどうでもいいことを考えていると紅葉さんは真剣な表情で私に真っ直ぐ視線を合わせると言ったんだ。
「殿の奥方様は俺だって話したよな?これからは俺じゃない紫衣が殿の奥方になるんだ。
だから、お前は皆の前ではうた様の名前を名乗って欲しい。
俺は公の場に出ることはなかった。代役だったからな。
だけど紫衣は違うだろ?殿と一緒に生きていくんだろ?」
いつも私をからかってくる紅葉さんとは全く違う別人のような紅葉さん。
でもやっとわかった。
紅葉さんが本当に言いたかったことがわかったよ。
「うん。」
あっさり言葉を返す私に驚いたように目を見開く紅葉さん。
「そんなに簡単に承諾してもいいのか?名前を2つ持つことになるんだぞ?」
「大丈夫!!だと思うよ。うたって呼ばれてもちゃんと返事ができるように練習しなくちゃ。」
そう言ってニッコリ笑う私を見て紅葉さんはガックリと肩を落としたんだ。


