話を始めてから紅葉さんは終始落ち着きなく頭をワシワシと掻いてみたり頬をペチペチと叩いたり、様子がおかしい。
「ねぇ、紅葉さん。ひょっとして緊張してる?」
紅葉さんを焚きつけるような言葉をわざとかけてみた。
軽い調子の会話が全く続かないんだもん。
なんだか調子が狂っちゃうよ。
それなのに紅葉さんは口をパクパクとさせるだけでいつものように言葉がポンポン飛び出すことはなかった。
本当に、どうしちゃったんだろう...。
「紅葉さん、ねぇ...ねぇってば!!」
言葉をかけても彼は頭を抱え込んで大きな溜息を吐くばかり。
私が何か失敗しちゃったのかな?
話の通じない私にあきれ返って言葉を失ってしまったのかな?
それとも..
それとも...
なんだかいつもと様子の違う紅葉さんに私はとても不安になった。
沈黙が続くたび、彼の溜息を聞くたび私の思考はマイナスに動いていく。
こんなのやだよ。
いつもみたいに憎たらしい言葉を話してよ!!
ジッと紅葉さんを見つめていると紅葉さんは私の視線に気がついたのか驚いたような表情をしてギュッと抱きしめてくれた。
「泣くなよ。」
「泣いてない!!」
強がりを口にする私を抱く紅葉さんの腕の力が強くなって私を閉じ込めるように包んでくれた。
「そのまま聞いて。」
紅葉さんの腕の中で彼の胸を通して聞こえる声に頷いてから耳を傾けた。
「紫衣にうた様になってもらいたいんだ。」


