「とにかくだ!!」
立ち上がった紅葉さんにビクリと体が跳ねた。
肩を揺らす私を紅葉さんはフッと小さく笑ってから言ったんだ。
「寝ろ!!」
「眠れないんだもん。」
紅葉さんの言葉に間髪いれずに言葉を返すと大きな溜息を吐いた後紅葉さんは懐に手を入れて小さな瓶に入った金平糖を差し出してくれた。
「ほらッ!!好きなんだろ?」
キョトンとしている私の手にその小瓶をのせると空を仰ぎ見る紅葉さん。
月の光に照らされて紅葉さんの陶器のように白い肌がとても綺麗だった。
「甘いもの食って何も考えずに寝ろ。」
「名前のこと聞けなきゃ気になって眠れそうにない。」
「お前、ほんと強情だよな。」
「紅葉さんほどじゃないけどね。」
だって気になるんだもん。
私の名前がどうかしたのかと思うとすごくすごく気になるんだもん。
小瓶の蓋を開けて金平糖を掌の上に乗せて転がす私をジッと見つめる紅葉さん。
全く寝ようとしない私の様子に紅葉さんは大きく溜息をついてから私の掌の金平糖を一粒とって口に入れた。
「甘いな...。」
空を仰ぎ見る紅葉さんの瞳にはいったい何が映っているの?
とても寂しそうに見えるその横顔を見つめていると涙が浮かんできた。
「紅葉さん、消えちゃいそう...。」
「消えねぇよ。」
「紅葉さんってとっても綺麗だから、そんなに寂しそうな顔していたら遠くに行っちゃいそうで私も悲しくなるよ...。」
「どこにも行かねぇって!!」
「だったらいいけど...なんだか寂しいね。」
「お前は殿のお帰りが遅いから落ち着かないだけだろうが!」
「それもある。だけどね?紅葉さんが何を考えているのかわからないのが寂しんだよ?」


