お母さんに叱られた子供のようにシュンと肩を落とす私の前には仁王立ちの紅葉さん。
相当怒っているのか、それとも呆れて言葉が出ないのか立ち上がったまま彼は言葉を発することがなかった。
「紅葉...。」
朱里さんの声も小さくて続く言葉が出てこない。
どうしようもない雰囲気に私の頭はパニックをおこして益々何を言っていいのかわからなくなっていた。
沈黙の広がる部屋。
誰も何も言わない。
そんな中、紅葉さんはまた大きな溜息をついた後、私の目の前に座った。
そして私の頭をクシャリとひと撫でしてから微笑んだんだ。
「俺が毎日お前の側に何のためにいるのかお前は本当にわかってなかったんだな。」
落ちてくる言葉はとても優しいもので私は彼のその声を聞いて堪えていた涙を零してしまった。
「泣くなよ..。殿はお前が俺だったら遠慮しないで色々聞けるだろうってお気持ちで俺をお前の側に置いたんだ。その殿の気持ちもお前はわかっていなかったのか?」
優しい彼の問いかけに私は何も言えず、だけど首を横に振った。
わかっている。
わかっていたよ。
だけど何も出来ない私がいつもいつも面倒を掛けるのはイヤだったんだ。
毎日、朱里さんと一緒に過ごすお茶の時間も負担になっているんじゃないかってずっと思ってたんだ。
私も何か役に立ちたいのに、そう思うだけで何もできない自分がとても悲しかったんだ。
「暦なんて覚えなくても毎日俺が教えてやる。そんなつまらないことを気にして何も出来ないお前見てるほうが俺も朱里も辛いんだよ。」
「うん。」
「この頃、お前元気なかっただろう?どうせお前のことだから何もできない自分か嫌いとかどうでもいいこと考えていたんだろう?そんなこと気にしなくていいんだ。お前は殿のことだけを毎日考えていたらいいんだよ。」
「うん...うん...。」
溢れて零れ落ちる涙を拭って私はニッコリと笑って見せた。
阿呆っていっぱい言われた。
だけどそれは紅葉さんの優しさ。
何度も首を上下動かして頷いた。


