勝利の女神になりたいのッ!~第1部~




固まったまま動かなくなった体。


私の背中にピッタリとくっつく石野さんの体温が熱い。


首筋にかかる彼の吐息が熱い。



「石野さん?」


「佐和だろ。」


「.....。」




彼はどうしても私に名前を呼ばせたいらしい。


何度も何度も注意をされる。


慣れない呼び名に緊張しちゃうし恥ずかしい。


だからだよ。


だから呼べないんだ。


だけど石野さんは許してくれそうにない。



「佐和って呼んで...。」


熱の篭った声で私の首筋をくすぐるように言葉を落とすんだ。




「佐和さん...どうかしたんですか?」


「どうもしない..ただ、」



間髪入れずに彼は言葉を落とす。


だけどその言葉は続かなかった。




本当にどうしたの?


なんか石野さん..少しいつもと違う。



「なぁ、紫衣。
...........今でも三成が好きか?」



突然のことで頭が回らない。


お兄ちゃんが好き?


そんなの好きに決まってる。


お兄ちゃんの幸せだけを思って私は時代を渡ってきたんだ。


そんなの....決まってるじゃない。




だけど私は応えられなかった。

どうしてだか言えなかったんだ。




「どうしてそんなこと聞くんですか?」



気がつけば私が石野さんに聞いていた。


でも石野さんは何も言ってくれない。


静かな公園に広がるのは静寂。


騒がしいこの世界にも時に訪れる静寂。


今のこの静寂はとてつもなく重い.....。