「紫衣、俺....。」
彼の表情はそのままに言葉が紡がれる。
でもその言葉さえ途中で途切れてしまうのだ。
「石野さん...。」
声を掛けても彼の瞳は私の瞳を覗き込んだまま動こうとしない。
当然言葉も返ってこない。
不安に包まれながら時間だけが過ぎていく。
彼の熱に包まれていた体は今は不安と恐怖に、寒々と冷えてしまった。
どうか嫌いにならないで...。
そんな願いを込めて、もう一度彼の名を口にした。
「石野さん。」
「佐和。」
訝しげな顔をして自分の名を口にする石野さん。
それでも彼が返事をしてくれたのが嬉しかった。
「佐和さん。私...。」
何か気に触ることしましたか?
そう聞きたいのに言葉を続けることが出来なかった。
「ん?」
俯いてしまった私に石野さんの声がかかる。
聞いてくれる姿勢がとられているのは彼の返事でもわかるのに私の唇は硬く閉じたまま開くことはなかった。
「どうした?紫衣。」
「なんでもないです。」
彼の問いかけにも私は俯いたまま首を横に振って答えた。
気になるのに彼の口から恐ろしいことを聞くことになるんじゃないかという恐怖心が生まれ何も聞けなくなる。
「外に出ようか...。」
私の背中に触れている彼の掌が私をグイッ引き寄せると立ち上がって話しかける彼。
そんな彼に私は頷くことで返事をした。


