嬉しいなんて思ったのは一瞬だけだった。
紅葉さんは本当に厳しい…。
歩く足音、襖の開け方、箸の上げ下ろし、それ以外にもご飯を噛んで飲み込むときのゴクリという音にまで注意が飛んでくる。
何をするにも気の休まる時なんてなかった。
「疲れた…。
紅葉さんの鬼ー!!」
自分の部屋に帰ることが出来たのは深夜…
多分だけど深夜。
この時代の時間がまだよくわからない私にはハッキリとした時間なんてわからない。
バスンッと布団に仰向けにダイビングして紅葉さんへの感情を思いっきりぶつけた私に頭上から落ちてきたのは紅葉さんの声。
「言葉も指導が必要だな。」
「ギャーッッ!!」
なんで?
なんで?いつの間に??
「うるさい。騒ぐな!」
悲鳴を上げたものの言葉が出なくてパクパクと口を開けることしかできない私に冷静な紅葉さんの言葉が掛けられる。
「殿がお呼びだ。」
早くしろと急かすように私の手を引く紅葉さん。
「え…えぇ?ど、どうして?なんでここに?」
「無駄口を叩いてないで早くしろ。」
とっても綺麗な姿に似合わない口調。
「意味わかんないですよ。突然現れて…」
失礼じゃないですか部屋に勝手に入ってくるなんてと続けたい言葉は飲み込んだ。
冷たい瞳がジッと私を見ていたんだ。


