部屋に入るとさっきの彼女が三成の席の隣に座っていた。
彼の隣で控えて座る彼女はとても綺麗で魅惑的だ。
「なにしに戻ってきたのさ!!」
私に向ってはき捨てるように言葉を投げてくる彼女。
目頭が熱くなるのを感じて一生懸命涙を堪えた。
「紅葉、口を慎め。」
静かな彼の静止の言葉。
それだけで涙が溢れ出しそうになる。
「その女、いったいどうするつもりなの?」
「俺の側に置いておく。」
「どこの馬の骨ともわからない女を?」
「紫衣の素性は俺が理解している。誰に理解されなくても俺が知っている、だから大丈夫だ。」
「そう、殿がそう言うならいいよ、もう何も言わない!!勝手にすればいいんだ!!!」
紅葉と呼ばれたその女は乱暴に襖を開けて部屋から出て行った。
部屋に残されたのは三成と私。
静かな部屋に彼の透き通った低い声が響いた。
「紫衣は何を泣いていたのだ?」
「.....。」
「話してみよ。」
「.....。」
「話せぬのか?」
「......。」
話せる訳がない...。
勝手に恋して失恋して...。
ぐちゃぐちゃな感情で自分でも何を考えて泣いていたのかなんて説明できないんだもの...。
「話せ。なんでも良い、話してくれ。」
優しく響く彼の言葉に我慢していた涙が溢れ出した。
細くて長い彼の指が私の頬を拭うように滑った後、瞼に彼の唇が触れた。
あたたかい彼の唇。
その唇から彼の吐息のような言葉が零れ落ちた。
「俺の見ていないところで泣くな。」


