「ゆきさんはとても素敵な女性です。
全身で正澄様を想っています。
そんなゆきさんが大好きなんです。
だからゆきさんが悲しむ姿を見たくないんです。」
ポロポロと零れる涙。
床の上にはポタポタと落ちる私の涙でシミが出来ていた。
いつも泣いてしまう。
涙を堪えきれない自分が大嫌い!!
「ゆきが理由でわしの誘いを断るというのか?」
厳しい口調の正澄様に私は肩が震えた。
「いいえ、待っている人がいます。」
「ならばなぜあの時断らなかった。」
「知らなかったのです。」
「なんのことだ?」
「あのやり取りがその...そういうことだとは知らなかったのです。」
呆れ顔の三成。
不愉快そうな表情を浮かべる正澄様。
「紫衣、これはどういうことか自分でわかって言っているのだな。」
「はい。」
わかっています。
だけど彼との約束を私は守りたい。
ゆきさんの笑顔も守りたい。
目を閉じて覚悟を決めた。
暗闇の中正澄様が立ち上がる衣擦れの音が聞こえたんだ。
「お待ち下さい、兄上。」
そして彼の声も耳に届いた。


