「あの...申し訳ありません。私...」
ハッキリしなきゃ。
心の中ではちゃんと思っているのになかなか言葉が出てこない。
「良い返事しか聞かぬぞ。」
モゴモゴとする私に正澄様の鋭い言葉がかかった。
バクバク心臓はありえないくらいに激しく動き、私は頭が真っ白になった。
「兄上、どこの馬の骨かわからぬ娘を側に仕えさせるのは如何な事かと思いますが。」
「なに、ゆきの下で働いておる娘だ素性はわからぬことはないだろう。」
ゆき....。
ゆきさん。
とっても親切にしてもらったゆきさんを悲しませるようなことしちゃいけない。
その為に私はここに来たんだ。
回らなかった頭の中にはゆきさんの笑顔が思い浮かんだ。
「あの!!
私、正澄様にはお仕え出来ません!!」
勢いに任せて出た言葉はとても失礼な言葉。
だけど止められなかった。
「ゆきさんを悲しませたくありません。
ゆきさんにはとっても可愛がって頂いています。
そのゆきさんの旦那様に仕えるなんて出来ません。」
城主の兄、正澄様。
彼に逆らうなんて無謀な行い。
この時代こんなにハッキリと自分の意見を言うなんて殺してくださいって言ってるようなものだ。
だけどこれが正直な私の答え。
ここで死んでも私はゆきさんと争うような立場になりたくなんてない。
それに....
それに....
待っていたの。
待っている人がいるの。


