正澄様…。
大好きなゆきさんの旦那様。
ゆきさんの悲しむ姿なんて見たくないもの。
「ダメです!
私じゃダメなんです。」
膳をゆきさんの胸元に差し出して私は大声で叫んでいた。
目の前には瞳を大きく開いて制止する雪さんの姿。
やっちゃった…。
そう思うと同時に助け船を出してくれたのは、やっぱり頼りになる朱理さんだった。
「紫衣は左近様の膳を運ぶように言われてたんですよ。
うっかり私が間違えてしまって、さぁ紫衣膳を取り替えてさっさと仕事をすませようか。」
お腹もすいたしねっておどけて見せる朱理さん。
正直ホッと胸をなで下ろした。
だけど肩の荷はおろすことは出来なかった。
「なんだい朱理、左近様とまた喧嘩でもしたのかい?
左近様がまた若い女にちょっかいでも出してヤキモチ妬いたんじゃないのかい?」
いえ…。
それ、むしろあなたの旦那様の正澄様が…。
固まったまま動けなくなった私と朱理さんはお互い目で語った。


