与えられる仕事はなんであろうと喜んで取り組んだ。
だけどそんな仕事にも苦手なものも出来てきていた。
「紫衣、ここはいいから盛り付けの手伝いしておいで。」
朱理さんは私をよくわかってくれている。
どうしても気が進まない膳を運ぶ仕事。
大勢で集まる部屋には抵抗なく行けるのに少し偉い方の一人のお部屋に行くのは、やはり戸惑いを感じてしまう。
「朱理、紫衣を甘やかすんじゃないよ!」
そんな時必ず飛んでくるのはゆきさんの大きな声。
ビクつく私は情けないことに何も言えなくなるんだ。
「あの…やっぱり私…」
膳を持つ手が震える。
だけど仕事を選り好みなんてワガママ通らないよね?
「それは正澄様の膳だよ。」
両手で慎重に膳を持つ私の背中に朱理さんの声がかかった。
正澄様と言えばゆきさんの旦那様。
今の私には一番やっかいな方だった。


