石野さんの言葉に反応しない私に石野さんは困ったような声で話しかけてきた。



「気を悪くした?」



不安そうな石野さんの声に私は一旦芽衣ちゃんのことを考えるのをやめて言葉を返した。




「いえ。本当に芽衣ちゃんと私は正反対で...。
芽衣ちゃんにはたくさん助けられてるなって考えてただけです。」



正直な気持ち飾らなければスラスラと言葉が出てくる。



「だけど、紫衣は紫衣の魅力があるんだぞ。それを俺が一番に見つけた。」



ニッコリ微笑む石野さん。



彼の手が私の手を取って指が絡んでくる。



「片手運転危ないです。」



手を引っ込めようとすると石野さんの手の力が強まって私の手はスッポリと石野さんの手に包まれてしまった。




そしてその手は放れることなくずっと繋がったまま車はマンションの駐車場に止まった。



「ここが俺の家。」



見上げるような大きなマンション。


とても立派な造りに驚く私の手を引いて石野さんは歩き出す。


「番号覚えてね。」


オートロックの解除の暗証番号を押しながら石野さんに話しかけられ不思議に思いながらも4桁の数字を覚えた。