「終わりました。」
重労働に思えた食器の片付けも取りかかってみれば意外に簡単ですぐに終わってしまった。
この時代、コッテリとした料理はなく煮物を中心とした和食を食べているからか食器は簡単に汚れが落ちた。
何を隠そう私は高校の三年間ファミレスでバイトをしていた経験がある。
といっても厨房では食洗機が活躍し、手洗いなんてほとんどなかったけれど、
片付けは得意な方だと思う。
「次はそこの大根をあらっておくれ。」
食器の片付けを終えて声をかけた私をゆきさんは満足そうに見てから次の指示を出す。
土間に置かれた山積み大根。
私は大根の土を取りながら桶の中の水で丁寧に洗った。
貴重な水をなるべく使わないように気をつけて大根を洗っている私を朱理さんが手伝いに来てくれた。
「紫衣、上出来だよ。
最初に土を落とすやり方を誰に教わったんだい?」
「ここに来る前の半年間、左近さんに色々教えて頂いたんです。」
小さい体の私を1人前だと妥協することなく様々な事を教えてくれた左近さん。
今、それがとても役にたっている。
「そうかい。なんだか妬けるね。」
「あの…ごめんなさい。」
悪いことを言ってしまったのかとシュンと肩を落とす私に朱理さんは綺麗に微笑んで話してくれた。
「小さいのに頑張る紫衣に妥協は出来なかったんだろうね。
左近様の気持ち私にもわかるよ。
私も同じだったからね。紫衣は一生懸命って言葉がよく似合うよ。」
一生懸命が似合う。
最上級の誉め言葉だと思えた。
この言葉に負けない私になりたい。
そう思ったんだ。


