「純粋に働きたいと思う子が少ないんだよ。
身分の高いお方に見初められて嫁ぐことを目的にここに入りたがる娘ばっかりさ。」
ゆきさんの話に私は言葉が出なかった。
「膳を運んで部屋に入る仕事があるからね。」
やっぱり意味がわからない私はキョトンとして首を傾げるしかない。
そんな私を見かねてゆきさんはとてもストレートに説明してくれた。
「殿のお部屋に膳を運んで上手くハラんだら、その女は殿のご側室になれるだろ?」
「!!」
驚いた。
知らなかったわけじゃない。
この時代、甘い恋愛なんてないに等しいって知らなかったわけじゃない。
だけど…
「そんなのイヤッッ!」
「何を興奮してるんだい?みんな考えることさ。」
当たり前だと言うように話すゆきさんに私はもう一度首を横に振ることで応えた。
「おかしな子だねぇ。
だけど、殿は大の人嫌いでね。必要以上に人を近づけないんだよ。
だから目的が果たせないとガッカリしてみんな辞めていくのさ。」
アッサリとした口調になんだか悲しくなった。
「‘好き’って大切じゃないんですか?
‘恋’って大切じゃないんですか?」
視界が歪んでいくのがわかる。
どうしてこんなに私は泣き虫なんだろう。
だけど身分を好きになんなんて悲しすぎる。
心に触れない‘好き’なんて悲しすぎるよ。


