まず私が朱理さんに指示されたのは朝食の膳を片付けることだった。
「紫衣、行くよ。」
長い廊下を膳を持ちながらスイスイと歩く朱理さん。
優雅で無駄のない朱理さんの動きに驚きながら必死について行った。
「ここだよ。」
扉の前で一旦足を止めて私を振り返った後ガラリと音を立ててスルスルと中に入っていく。
朱理さんの動きに見とれてしまっていた私は慌てて彼女の背中を追って扉をくぐった。
「そこに置いて、こちらにおいで。」
手に持っていた膳を指示された場所に置くと、やっと周りを見ることが出来た。
現代でいうお台所。
沢山の女の人が所狭しと働いている。
とても私が手を出せる状態ではないという事は何も知らない私にも手に取るようにわかった。
だけどウズウズした。
包丁にまな板。
長く手にしていない調理器具。
スイッチ一つでご飯が炊き上がる炊飯器もない。
ひねれば水が出る水道も、火がつくガスコンロも何もない台所。
だけど私にも何か…
何か出来ることはないのかしら?
「朱理さん!!」
知らない女の人と話しをしている朱理さんに駆け寄って彼女の着物の袖を遠慮気味につかんだ私はとても周りを驚かせてしまっただろう。
だけどウズウズが止まらなかった。


