石野さんは私の横に座った。
俯いたまま顔を上げない私に石野さんの手が伸びる。
顎を持ち上げられ石野さんの瞳に映る私が見えた。
泣いている顔なんて見られたくない。
なぜ泣いてるのかと尋ねられても私は答えられないんだ。
一人で勝手に恋をして一人で勝手に舞い上がっていたなんて恥ずかしすぎる。
それに私の本当の素性を彼に話しても信じてなんてくれないだろう...。
だから涙の訳は聞かないで。
「本当にすまない。勝手に携帯の電源を落としたりして...。
お前が友達と連絡を取るのはマズかったんだ。」
「どういうこと?」
「嶋田の奴...お前の友達と二人で過ごすってメールしてきたんだ。」
「だから芽衣ちゃんの電話を切ってしまったの?」
「俺も....俺も紫衣と、い、一緒に...二人だけでいたかったんだ。」
嶋田さんがいるだろうと山に向って車を走らせている時受信したメールに芽衣ちゃんと二人で過ごしたい、お前もよろしくやってくれ!!
そう書いてあった。
景色のとても綺麗な駐車場に車を止めてトイレに行く振りをして嶋田さんに電話をしても居場所は言わずにメールを送ったとおりだからとだけ告げられた。
「嶋田の勝手な行動にムカついてたのもある、だけどそれ以上に緊張していたんだ。
紫衣と二人っきりだと思うと...舞い上がってしまって何も話せなくなった。」
ごめんな、つまんない男なんだ。
最後の石野さんの言葉と一緒に私の涙をやさしく拭ってくれる指が頬に触れた。
あたたかい指先、そしてその仕草に私の胸は熱くなった。


