フェンスまで歩いていくと車の中からでは一部しか見えなかった景色が全貌出来た。
茜色の空の下、遠くに広がる青い海。
とても綺麗だ。
420年前私の生きていた世界にはなかった景色。
緑の少ないこの世界を好きになれなかった。
車の音、音楽、人の話し声、電車の音。
音で溢れた世界を好きになれなかった。
山の静けさと見たこともない景色に瞳から涙が溢れていた。
静けさの中に鳥の鳴き声が聞こえる。
懐かしい静けさ。
張りつめていた気持ちが一気に緩んだ気がした。
忙しく動き回る世界で私は無理をしていたんだ。
この静かな世界にとても心が癒されるのがわかった。
同時に自分の生きた世界が恋しいという気持ちが溢れ出していた。
「お兄ちゃん、紫衣は寂しい…。」


