「とっても綺麗...。」
「この景色を何年も何百年も前の人も見ていたんだ。」
「そうね、ここはとても長い間人に愛されてきた場所だものね。」
「そうだ、同じ景色を書物の中でしか触れることの出来ない有名な人物が見たと思うとちょっとした感動だ。」
「石野さんって見た目と違ってロマンチストなんですね。」
私の言葉に頬を赤く染める石野さん。
「父が歴史の好きな人だった。空想しながら生きているような...そんな父といつもここに来て話を聞かされたんだ。」
「石野さんのお父さんも歴史が好きだったんですか?」
「あぁ、俺の歴史好きも父親の影響だ。」
二人で湖を眺めているとバタバタとした足音とともに芽衣ちゃんの元気な声が響いた。
「紫衣---!!起きてたの?」
走ってくる芽衣ちゃん。
起きてたのじゃないじゃない!!
石野さんはとってもいい人だったけど、もしもとっても危ない人だったら寝ている私はどうなってたの?
言いたいことは山程あったけど、二人になれたから石野さんがお兄ちゃんだとわかったんだよね。
「散歩楽しかった?」
「うん、とっても!!紫衣どんなに声かけても起きないんだもん。」
「ごめんね。」
芽衣ちゃんの後ろから少し遅れて走ってきた嶋田さんは石野さんの側に行って何か話しかけている。
「ところで、芽衣ちゃんは嶋田さんと上手くいきそう?」
小さな声で芽衣ちゃんに尋ねると芽衣ちゃんは頬を赤く染めてコクリと頷いていた。
「そっか!よかったね。」