左近さんの後ろについて部屋の中に足を進めた。
ドキドキとうるさいほど鳴り響く心臓の音ばかりが耳の奥に響いて頭の中は真っ白だった。
緊張している。
言葉で表せないほどの緊張。
緊張しすぎて何も考えられないなんて経験したことないほどの緊張。
どうでもいい緊張具合を頭の中で考えていた。
「紫衣、座りなさい。」
左近さんの声に私はハッとして左近さんの隣に座って頭を深々と下げた。
「殿、私の養女紫衣です。」
左近さんの言葉で私は一度顔を上げてから「紫衣です。」と声を出した後もう一度頭を下げた。
左近さんに教えてもらった作法も頭が真っ白で思い出せない。
ヒヤヒヤと醒めていく頭で一生懸命考えた。
顔は上げたほうがいいの?それともこのまま伏せていたほうがいい?
どっちだか思い出せないまま私は顔を上げれなくなった。
「紫衣、顔を上げなさい。」
動けなくなった私を促すような優しい左近さんの声に私はオズオズと顔を上げた。
正面を見る勇気はなく、左近さんを見上げるようにして視線を動かすと優しい左近さんの瞳が私を映していた。
その瞳の優しい光に私は左近さんにニッコリと微笑んで見せた。
「恥ずかしがり屋でしてね。」
左近さんは三成に話しかけながら私の頭をグリグリと撫でてくれる。
乱暴だけど優しい左近さんの掌の動きに私は目を細めていた。


