「殿、左近です。
紫衣を連れてきました。」
襖の前で部屋の中に向って声を掛ける左近さん。
止まっていた頭が一気に覚醒した。
ここまでどんな風に歩いてきたのかさえ解らないほど混乱していた頭が一気に冷たく冴えてきた。
「入れ。」
低く透き通った綺麗な声。
三成に逢える。
私の体は急に震えだした。
左近さんは私の震えを感じてギュッと手を握りしめてくれる。
ゴツゴツして大きな温かい左近さんの掌に私の小さな掌が包み込まれゾクゾクと冷えていた心が溶けていくのがわかった。
「紫衣、大丈夫だ。何も心配することはない。」
私の目を見ながら話してくれる左近さん。
左近さんが信じる三成。
私が思い描いた人と変わらぬ人物に違いない。
そう思うと心がスッと軽くなった。
左近さんに大きく頷くことで返事を返した。
左近さんは私の手をギュッと握ってから離しもう一度部屋に声を掛けて襖を開けた。


