「紫衣、何でも話しておくれ。」
私と真衣さんの間でいつも心を痛めているのはお父さんの長吉さん。
「何もないよ。紫衣は川原で遊んでいたんだよ。」
「そうか、紫衣は川原が好きだな。」
「うん。大好き!!」
お兄ちゃんに逢えるから...。
笑顔で答える私の頭を優しく撫でてから長吉さんは畑仕事に戻った。
「もう少しで終わるから一緒に帰ろう。」
畑から長吉さんに声を掛けられたて私は大きく頷いて返事を返した。
畑の横で石を積み上げながら遊んでいても私の頭の中は紫衣を連れてくることばかりだった。
優しい長吉さんに本当はお別れを言いに来たのに長吉さんの笑顔を見ていると言い出せなくなる私。
いっそ神隠しにあったかのように彼の前から姿を消したい。
風が私を攫ってくれないか...
現実離れした願いを胸に秘めながら遊んでいたら強い風に囲まれて私は意識を手放した。
「紫衣---!!」
意識を手放す寸前に届いた長吉さんの声に胸がギュッと痛くなったんだ。


