我慢が出来なくて泣きじゃくる私を抱き寄せてくれるお兄ちゃん。


お兄ちゃんの腕の中はとても安心できる。


胸に頬を押し当てるとトクトクと規則正しい音が聞こえた。


私はその音を聞きながら眠りに落ちた。





「紫衣、俺の望みを叶えるのはお前が夢で逢った紫衣の力だけでは無理なのだ。お前の力も必要なのだ。
だが、俺は迷っている。お前達が俺の犠牲になることで俺の望みを叶えて良いものかと…。」


紫衣が夢で紫衣に逢った。

つまりは400年後の紫衣の生きる時代を見たのであろう。

望んではいけないと無邪気な紫衣を見る度考えていた。

二人の紫衣は二人でひとつ。

二人が同時に俺の側には存在できない。


二人共を愛おしいと思う俺には選ぶことなど出来ない。


紫衣の人生を狂わせてまで己の望みを叶えることも間違っているのではないかと思う。


揺れたことなど一度もなかった。


己のしでかした失敗をやり直したいと、ただそれだけを思って生きてきた。


紫衣に逢うまでは、ただ過去の過ちをやり直す事しか考えてなかった。


だけど紫衣、お前に逢って俺は揺れることを知った。


揺れてはいけないと、惑ってはいけないと強く思い続ける気持ちが消えたのだ。