彼は後ろに飾られた花瓶を黒板に向かって投げ付けた。

花瓶は大小の破片をばらまきながら、ようやく硬い呪縛から解き放たれたように、水と光を乱反射させながら優雅に地面に落ちていった。

彼とは英太であり、彼はびっこを引きながら教室の前まで行くと水槽の前に立った。


教師も生徒も立ち尽くし、動くことはできなかった。

英太は水槽から金魚を2、3匹取出し、教卓に乗せた。

金魚は教卓の上で飛び跳ねたりしているが、英太は床に散らばる一枚の花瓶の破片を拾いあげると、金魚に突き刺した。

金魚といっても突き刺すことで血が教室内に飛び散るのには十分な位の大きさであり、また英太は金魚にガラス突き刺すことに始まるような、どんな訓練でも乗り越えられないある種の才能を持ち合わせており、そういった技術と風格が自然と教室を整然とさせたのだった。

生徒等は悲鳴をあげ、教師は、英太を止めようとした。

しかし、英太はガラスを自分の首に近付けた。


これ以上近づくなの合図だと、教室内の全てのものが理解した。




英太はガラスを持ったまま、卓上の微かな命を食らい付くしたのだ。


英太は言った。


“生きることは恨むことだと。”