「すみません。道に・・・道に・・・迷っちゃって・・・。」
息を切らしながら、必死に謝った。
「いいんです。来てくれれば、それだけでうれしいですから。」
時計は一時近い。普通なら、こんなに待ち合わせの時間に遅れたら帰ってしまう。それなのに彼女は、加藤の事を待ち続けていた。それだけ加藤に会いたかった証拠だ。どんな手を使えば、たった一週間やそこらで、彼女にここまで想わせる事が出来るのだろうか。
「・・・ホントに、すみません・・・でした・・・。」
小太りな体で無理に走ったから、なかなか呼吸が整わない。
「気にしていないですから。それより、加藤さんこそ大丈夫ですか?」
加藤の背中をさすりながら、そう言った。
「だ、大丈夫です。・・・はぁ・・・はぁ・・・。」
とても大丈夫には見えない。
「とにかく、どこかで休みましょう。」
小さなカフェに二人は入った。