「それで何かわかったのか?」
部長は身を乗り出してきた。
「わかったと言うか・・・考えれば当然の事って感じですかね。」
引きずっている。僕の言葉には覇気がなかった。
「ん?どうした?なんか、お前も様子がおかしいな。お前に関係する事なのか。」
関係している。けど、それを部長に言う必要はない。
「いや、僕は関係ないです。」
「そうか・・・。なら、いいんだが。じゃ、加藤のおかしい原因と言うのはなんなんだ?」
「単純な事です。恋ですね。」
「恋?恋って・・・恋愛の恋か?」
加藤ほど、恋が似合わない男も珍しい。部長もそう思っていたのだろう。僕の言葉に戸惑っている。
「加藤が恋ね・・・。想像も出来ん。」
「でも、部長。そんな奴だからこそ、一度恋すると変になるんですよ。女子社員に嫌われるくらいにね。」
「そうか、恋か。でも、こればっかりはやめろとも言えんしな。まぁ、あいつの事だ。すぐにフられて、元に戻るだろう。」
よく聞くとひどい言葉だ。でも僕は、あえてスルーした。
「で、部長、これで終わりって事でいいですよね?加藤の事は。」
「あぁ、なんか変な事頼んですまなかったな。この埋め合わせは、必ずするからな。」
それだけ言うと、部長は応接室を出ていった。