「こんな感じだったの、覚えてる?」
すごい力だ。とても女の力とは思えなかった。
「うぐ、く、苦しい・・・。やめろ・・・。」
「私も、あの時そう言ったわ。」
「あの時?何なんだ・・・意味・・・わからない・・・。」
「さすが、躊躇なく人を殺せる人は違うわ。私の他にも何人も殺して、わからなくなっちゃったのかしら。」
意識が遠のく。目の前が暗くなり始めた。
「まだよ、まだ。そんなに簡単に殺しはしないわ。じっくり、じっくり、私の受けた屈辱を何十倍、いや何百、何千倍にしてから、あの世に招待してあげる。」
そう言うと、彼女は手を弛めた。瞬間、脳が血で満たされるのがわかる。
同時に、血が巡ってきたせいなのかはわからない。記憶が、あの記憶の奥底に閉じこめていた記憶が、溢れるように思い出された。
目の前にいる彼女。その彼女は見覚えのある顔だ。
「の、望?」
「そうよ、望よ。あなたの殺した望よ。」
戸惑ったのは一瞬だった。すぐに目の前に、望がいる事に恐怖した。
「な、なんで・・・。」
望の腕は、まだ力を抜いたままだ。それが幸いした。僕は腕をふりほどき、四つん這いになって逃げた。
しかし、そんな僕を望は許さなかった。
「逃げられるとでも思っているの?」
そう言うと、すごい跳躍で、僕の上に乗っかってきた。
「うわっ。」