「ねんねこ、ねんねこ、ねんねこなぁ・・・。」
始まった。何回も、何回も同じフレーズを繰り返し続けている。
「やめろっ。」
思い切り叫んだ。普段、僕は怒ったり、叫んだりする事はまずない。その僕が夢の中では、叫び続けていた。
「うるさいっ。」
「うるさいって言っているんだ。」
それでも歌は止まない。
「ねんねこ、ねんねこ、ねんねこなぁ・・・。」
我慢出来なかった。その歌を歌っているやつを探した。
「どっちだ?どっちだ?」
暗い、何もない世界を、声だけを頼りに駆け回った。すると、一箇所だけ明るくなっていた。声はそこから聞こえてくる。
「こっちか、こっちにいるんだな。」
全力で走った。
「いいか、そこを動くなよ。いいな。」
夢の中とは言え、どうして僕はこんなにムキになっているのだろう。すごい目つきになっているのは、自分でもよくわかった。自分がまるで自分でないように感じる。
「お前か、お前が歌っているんだな。」
目の前に髪の長い女がいた。顔は暗くなっていて見えない。でも、その女が歌っているのは間違いない。側に行けば行くほど、頭が割れそうになるくらいに、歌が僕の中に入り込んでくる。
「やめろ、やめろって言っているんだ。」
女の胸ぐらを掴み、何度もビンタした。
しかし、女は構わず歌い続けた。