恵は、首を横に振った。
「それは、わからない。あまりにも、真剣な顔で独り言を言っているから、私、怖くて・・・。ほら、加藤さんもいなくなる少し前は、かなり目がイってたでしょ。あんな感じ。だから、声をかける事が出来なかったの。」
いまにも泣き出しそうな声になっている。
「それって・・・、かなりヤバくない?」
「だよね・・・。それで、私、どうしたらいいかなって・・・。」
これはかなり切実な悩みだ。絵里香は思った。
「ねぇ、恵、ひとつ聞いていいかな?」
「何?」
「気を悪くしないで聞いてね。大河内さんもさ、正直言ってそんなに格好いい方じゃないよね?スーツのセンスも微妙だし・・・。それにいるのか、いないのかわからない時もあるしさ。どっちかと言うと普通、いや普通よりちょっと下って感じかな。それをあんたみたいな可愛い子が、なんで好きになったの?」
絵里香が念を押したにも関わらず、恵は少し機嫌を悪くした。
「絵里香が言うほど、ダメじゃないよ。そりゃ、絵里香の彼氏は格好いいけどさ。でも、大河内先輩だって、負けずに格好いいんだよ。私、こんなだから仕事でよくミスるでしょ。そんな時に必ず、大河内先輩は助けてくれるの。必ずだよ。これってすごくない?それでだんだんいいなって思うようになって、気がついたら好きになってたの。」
「そっか。」
恵の真剣な気持ちを聞かされ、ますます、絵里香はどう答えていいのかわからなくなった。
「私、どうしたらいいんだろ?」
恵がもう一度、答えを求めた。