「いや、最近は一緒に来てないですね。」
「だろうな・・・。」
(なんで部長が、電車を変えた事を知っているんだ?)
「だろうなって、なんで知っているんですか?」
思った事を口に出してしまった。
「なんでって、なんの事だ?」
部長の口振りから察するに、どうも違うらしい。僕は慌てて訂正した。
「あ、いや、すいません。勘違いです。それで、だろうなって言うのは、どう言う事なんです?」
「いや、加藤なんだけどな・・・来てないんだ。会社に。」
「そりゃ、あんな奴でも、風邪をひいたりする事はあるでしょう。それがどうかしたんですか?」
僕は部長の言葉を、軽く捉えていた。しかし、これは間違いだった。
「違う。違うんだ。加藤の奴・・・もう一週間も来てないんだよ。それも連絡はないし、いくら携帯にかけても繋がらない。今日にいたっては、電源が入っていないと言われてしまった。」
「つまり、それはどう言う事なんですか?」
「わからん。単なるズル休みなのか、それとも何かしらの事件にでも、巻き込まれたのか・・・。」
ここで僕は嫌な予感がした。
「もしかして、ここに呼ばれたのって・・・。」
「さすが、察しがいいな。一度、様子を見てきてくれないか?山本課長には、もう言ってあるから。」
山本課長と言うのは、今の直属の上司だ。その上司に連絡済みと言う事は、僕には選択する権限すら与えてもらえないと言う事か。また、ため息をついた。
「わかりました。これから行ってきます。」