「な、なんで君がその歌を知っているんだ?」
「覚えていない?」
「覚えている?何の事だ?」
「覚えているでしょ?」
「だから、何の事だ?」
彼女の言っている言葉の意味がわからない。ベッドから降り、電気を点けようとした。
「ダメ。」
加藤の首を、彼女の両手が覆った。細い腕からは、想像できないほどのすごい力だ。
「う・・・うぐ・・・。」
「ねぇ、覚えているでしょ?この歌、あなたにいつも歌ってあげたじゃない?」
「う・・・歌・・・?」
「そう、歌。ねんねこ、ねんねこ、ねんねこなぁ・・・って。」
「し、知ら・・・ない。」
加藤は手を振りほどこうと必死だった。かきたくもない汗で、着ているTシャツはびっしょりだ。
「知らないなんて言わせないわ。私は・・・私は・・・はっきり覚えている。あの時、あなたが私の首をこんな風に絞めたでしょ。汗が私の顔にかかって・・・あの時の臭い・・・忘れる訳ない・・・。」