「俺も葵も、御堂さんも他の奴らも。嬢ちゃんのこと、大事な家族だと思ってるぜ」
言いながら、原は右回りにハンドルを切った。紺色の小さな建物は二階建てで、駐車場はあまりスペースがない。
ここで、原は初めてすばるに向き直った。
すばるもやっと、少し光が戻った瞳を原に向けた。
「俺はここにいるし、嬢ちゃんもここにいる。それだけ有りゃ十分じゃねーか?」
すばるの頭に手が伸びる。
「…覚えとけ、嬢ちゃん」
わしわし、と頭を撫でる手。安原とはまた違った撫で方。
粗雑さの中に暖かさを感じ、すばるは目を細めた。
「嬢ちゃんは俺の大事な妹だ、何があっても絶対変わんねー」
炎のように熱く、やわらかく、すばるの中に灯るあかり。
じわりと広がる熱。
身体の芯で絡まる茨が焼け付くような優しい痛みに触れてみたい、とすばるは思った。


