「この国も!あんたも!!みんな嘘っぱちじゃないか!!!」



自分はただ呆然とそれを見ていた。
昇級試験に合格した証、その級証だけが若草色の隊服の上に光っていた。


「………レイ、」


続く言葉は見つからなかった。ただ、栗色の髪が揺れるのを見ていた。


ふわりと毛束が踊って、少年が振り向く。


見慣れた年相応の笑みはやはり可愛らしくて。
今でも、自分の心をズタズタにしてくれる程に、残酷で。



「僕はこの国を許さない。

兄さんだって────僕は、絶対に許さない」





春風と呼ぶにはあまりに容赦の無い、芽吹いた春そのものをもぎ取っていくような風の日のこと。



───春は嫌いだ。



優しい顔をして、大事なものを奪っていくから。