「第一・第二班は支援隊の誘導経路確保!!」


安原葵が半ば叫ぶようにして指示を飛ばす。
よく通る低い声は戦闘の爪痕が残る瓦礫に反響し、皆瀬すばるの鼓膜を、その身がおかれた周囲の状況とは裏腹にやさしく震わせた。


「第四班は残留市民の捜索!!」


ざくざくと地を踏みならして、それぞれの班が位置につく。

「第三・第五班は前線へ!これ以上、相手を前進させるな!!」

鉄がこすれる音と、なにかが焦げ付いたような臭い。



自国の中でも最大の空港への襲撃に対し、出動要請を受けた特務機動隊。



危険が迫っていることを理解しているはずの国が、なぜ事が起こってしまってからでしか対応をすることができないのか?

日に日に増加していく死傷者を目の当たりにした国が、なぜ“安全保障”を唱え続けることができるのか?



疑問点。不信感。



“保証”の下で腐敗していく“平和”を形づくる国にも。

大切な部下たちを戦場に送る自分にも。



溢れ出る感情に、安原は吐き気を覚える。


「…皆瀬は俺と来い」


それだけ言って、1メートルをゆうに越えた鉄塊を肩から斜めに引っ提げた。